取引先の役員さんからメールが来た。「PCが起動しない。全てのデータが消失した。なんとかしてほしい。少なくとも御社にあるデータを全ていただきたい」このメールを読んで「終わっている」と思ったのは私たちだけでなはい。PCのデータバックアップは2重、3重に行うのが普通である。「俺、IT弱者なんだよね」この言葉に呆れた。
目次
上場企業の役員がPCのデータのバックアップをしていない事実
恐ろしい話だが、先日仕事をしていた企業の役員から悲痛なメールが来た。
「すいません。PCが起動しなくなりまして、全てのデータが無くなりました。御社との取引データを全て再送していただけませんか」
このメールを読んで思うのは、バックアップデータはどうなていたのだろうか?
役員としてPCにあるデータの保全はどうしていたのだろうか?
会社にPCトラブルの対応ができる人がいないのだろうか?
大変申し訳ないが、極めてやばい事案だ。
そこで、電話で確認した。
PCデータの復旧をやる社員さんはいないのですか?
(当方も困惑気味というかお怒り気味で連絡する)
「いやー参ったよ。起動しないのだよね」
「レッドスクリーンですか」
「何それ」
「起動しないのは、電源を繋げてスイッチを押しても起動しないということですか?」
「そうなんだよ」と明るく答えるノーテンキ。
「セーフモードで起動できませんか?」
「どやればいいの?」
この段階で終わっていると感じる。
Windows10のセーフモード起動方法がわからなければ、スマホでGoogleで検索することが第一にやるべきことですよね。
弊社は取引先のデータ保管会社ではありません。
「悪いけど、君来て直してくれないか?」
「御社にご担当者様はいないのですか」
「誰が詳しいのかな?」
これで、よく上場したもんだ。
「PCの修理は業務外なのでできません。それから、担当役員であるお客様のデータを他の社員には送信できません」
「なぜ?」
は?なぜ?と聞くの。この役員は善管注意義務ということを知らないのか?
この段階で仕事の継続をしないことを、心に決める私。
弊社の社長の考えはどうかは分かりません。
ニューヨークタイムズの業績回復はネットを知り尽くしたCEOの功績である
マーク・トンプソン氏はBBCの総裁を辞任して、2012年にニューヨークタイムズ社のCEOに就任しました。
トンプソン氏は、社業に歴史に残る功績を残しました。
デジタル有料購読者が過去数年で激増したのもトンプソン氏の経営手腕によるものです。
広告収入の落ち込みを相殺するほどの販売売り上げを出しました。
その上、今時の新聞業界では珍しく、取材記者を増員しています。株価も上昇し、S&P500をはるかにこえています。
トンプソン氏にインタビューしたことがあります。
「今、何に力を入れているのですか?」
「印刷ベースの新聞はもはや売れません。このままでは、倒産です。なので、インターネット版の販売を強力に進めました。記者に対する質問は、記者自身が返信する形にしました。また、記事の信憑性を確認するオンブズマンは、記者を紙面上で批判します。批判された記者は紙面上で反論します。そこに読者が入ってくるの仕組みを作りました。情報が一方通行にならないようにね。それから、10代の学生さんとの対話には特に力を入れました。高校生が興味を持っているニュースはなんだろうと調査して、記事を書くことをはじめました。高校生、大学生との意見のキャッチボールが始まりました。しかも、世界中の学生さんとつながることができました。読者の若年層開拓を記者が行なっていったのです」
「これからどんなことに取り組みますか」
「WordPress、HTML,CSS,phpの言語を学んでいます。自分でWebサイトを自由に作れるようにならないとね。それができないと、自分自身が会社で取り組んでいるシステム改修やバージョンアップの評価をできませんからね」
本当の経営者は学ぶことを止めない
21世紀の経営者は、インターネット、SNS、Webに精通していないと生き残れない時代になった。
PCはインターネットをはじめとするネットメディアの入り口である。
そして、ビジネス文書を作成して、送信する道具である。
PCを狙って、不正アクセスし企業情報を盗み出そうとしている集団が世界中にいる。
中国共産党のように組織的にハッキングしている集団もいる。
企業は安全に企業の活動を行うのが責務であり、個人が企業から貸与されているPC、個人で使用するPCを含めて対策をしなければならない。
それが21世紀の経営者に果たされた善管注意義務の一つである。
PCを使いこなせないことを胸を張って宣言するのは、役員としての業務放棄に他ならない。
参考までに、PCデータを喪失した役員は、解任された。